
殺菌剤・消毒剤・抗菌剤の特徴と分類
人間の目に見えない細菌、カビ、ウイルスなどは、食中毒や伝染病などの
原因になる可能性があり、その対策は人類にとって長年の課題でした。
明治20年に現在の花王を創業した長瀬富郎が「清潔な国民は栄える」を唱えた当時は、
まさに切実な問題だったと考えられます。
対策の第一として清潔を保つための石けん、洗剤があります。
また、細菌などが身体の中で繁殖して発病した場合には
化学療法剤や抗生物質などの医薬品が開発されてきました。
殺菌剤、消毒剤、抗菌剤は、その中間に位置する化学製品と言えましょう。
はじめに菌に対する用語について、日本石鹸洗剤工業会が整理しているので紹介します。
滅菌が最も強い対処法です。
化学製品による方法以外に高温や放射線などの
物理的な方法もあります。
生体細胞まで死滅するので、もちろん生体には使えず、
医療器具などが滅菌する対象です。
歯科医院などで「当院の器具は○○で消毒しています」という表示をみたことが
あるかも知れません。
後で述べる高水準の殺菌消毒剤を使って滅菌してあることを説明しているのです。
これに対して、殺菌という用語は単に菌を殺すという意味だけで、
その程度は含まれません。
消毒は害のない程度まで微生物の数を減らしたり、
毒性を無力化させたりすることを言います。
しばしば殺菌という用語と一緒にして殺菌消毒と使われることもあります。
これに対して、除菌、抗菌、減菌という用語はかなりあいまいです。
抗菌には、菌を殺したり、減少させたりという意味はなく、
あくまでも繁殖を防止するという程度の意味です。
除菌や減菌は、普通の洗剤で洗うだけでも対象になりえます。
殺菌剤・消毒剤・抗菌剤には、次に示すように多くの種類の商品が開発され、
販売されています。
化粧品の防腐剤、外皮用殺菌消毒剤、防疫用殺菌消毒剤は、
いずれも医薬品医療機器等法(薬機法、2-3参照)の規制を受けている化学製品です。
化粧品には細菌やカビの栄養となる成分が多く含まれています。
一方、人間の皮膚には多数の細菌などが住み着いており、
空中には常にカビの胞子が浮遊しています。
チューブ入りクリームを少量指に採った際には、指に付いていた細菌が
チューブの口に残ったクリームに移り繁殖を開始します。
また広口の容器に入った化粧品のフタを開けたらカビの胞子が落下しています。
カビや細菌の繁殖を防ぐには、すべての化粧品を1回限りの使用になるように
小分けしなければなりませんが、それは包装材料という資源の無駄使いであり、
また実行も不可能です。
このため多くの化粧品にはパラオキシ安息香酸エステル(パラベン)や
フェノキシエタノールのような薬機法の化粧品基準で認められた化学物質が
一定濃度以下という条件付きで使われています。
その多くは食品衛生法の食品添加物としても認められた化学物質です。
防腐剤が肌に悪いという評判(誤解?)があるため、
防腐剤を使っていないと謳っている化粧品も売られています。
しかし、上記のような小分けでない限りは、ブチレングリコール(BG)などの
抗菌効果のある保湿剤を多くの場合には使っています。
ただし、これらの抗菌効果は防腐剤ほど強くないために
防腐剤よりは高濃度にならざるを得ないのが欠点です。
防疫用殺菌消毒剤は、医療従事者の消毒、医療用器具の殺菌消毒、
病院内の殺菌消毒ばかりでなく、
感染症が見つかった場合には患者の住居、立ち回り先などの消毒にも使われます。
防疫用殺菌消毒剤は、殺菌消毒の強さによって次の表のように分類されます。
しかし、使用条件が難しく、器具に腐食性があるものがあるため、
すべてに使えるわけではありません。もちろん手指の消毒など
生体に使えるものではありません。
中水準の殺菌消毒剤は、次亜塩素酸ソーダや消毒用エタノールなど
比較的安価な化学物質があり、病院内の消毒などによく使われます。
また低水準の殺菌消毒剤は、カチオン界面活性剤や両性界面活性剤
(1-7 界面活性剤の用途と種類 参照)のものが多く、
医療従事者の手指の消毒、病院内の消毒などによく使われます。
殺藻殺菌剤は冷却水管理に使われます。
ビルなどの屋上に冷却塔をよく見かけます。
温度の上がった冷却水を冷却塔内で上から降らせ、
冷却水の一部を蒸発させて冷却水の温度を下げ、循環再利用します。
しかし、菌や藻類が冷却塔内で繁殖し、スライムが付着して、
エネルギー効率を悪化させ、またその重みによって冷却塔を壊すばかりでなく、
レジオネラ菌を含む飛沫感染問題を起こしかねません。
このため、冷却水管理には有機硫黄系や有機ハロゲン系などの殺藻剤、
次亜塩素酸ソーダ、過酸化水素などの殺菌剤が使われます。
木材保存剤は、木材腐朽菌ばかりでなく、シロアリの被害も防ぐ化学製品なので、
厳密には殺菌消毒とは言えません。木造住宅の建築現場で木材保存剤が塗られて
着色した材木を見かけたことがあると思います。
主な成分は、ナフテン酸銅、ナフテン酸亜鉛、
AAC剤(カチオン界面活性剤であるアルキルアンモニウム化合物)などです。
プラスチックやゴムは、意外にもその表面にカビが生えたり、細菌が繁殖したりします。
風呂場の壁や天井、パテに黒カビが生えるのは困りものです。
特にシリコーン樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、
可塑剤を使っている塩化ビニル樹脂などのプラスチックは留意する必要があります。
このため塗料や接着剤には防カビ剤が使われています。
また、冷蔵庫のゴムパッキンなどにも防カビ剤は使われています。
プラスチック成形品にも成形加工時に防カビ剤や抗菌剤が加えられます。
抗菌プラスチックは、掃除機、洗濯機、タッチパネル、携帯電話、空調フィルター、
食品包装フィルム、電車の吊り輪などによく使われています。
防カビ剤の化学構造は複雑なものが多く、分類も難しい状況です。
著名な商品名としては、バイナジン(OBPA)、プリベントール、チアベンダゾール(TBZ)
などがあります。最近は銀イオンの抗菌効果に着目した銀系抗菌剤も広く使われています。
とくにチオサルファイト銀錯体は200℃を超える耐熱性があるので
多くのプラスチックに使われています。
最後に手や調理器具などを清浄に保つための洗剤としては、
アニオン界面活性剤やノニオン界面活性剤(1-7 界面活性剤の用途と種類 参照)
がよく使われます。一方、カチオン界面活性剤は殺菌や抗菌効果があります。
しかしアニオン界面活性剤とカチオン界面活性剤を一緒にすると
効果がなくなってしまいます。
これに対しては、カチオン界面活性剤とノニオン界面活性剤を配合した洗浄除菌剤があります。
また、まな板のような調理器具には、アニオン界面活性剤やノニオン界面活性剤の洗剤で
洗った後に次亜塩素酸ソーダのような塩素系漂白剤で消毒する方法が
もっとも安価で確実かも知れません。





コメント